松浦晋二郎ブログ

民事訴訟は私人間の権利義務を私的自治の範囲内で自由に処分する場であり学問上の真理を確定するための場ではないので民事訴訟と学問上の真理確定とは無関係である。従って自己の著書論文に多数の学問的間違いを書いている学者が、自己の著書論文の学問的間違いを指摘した相手のことを恨み、名誉毀損を理由に民事訴訟で当該相手を訴えて恫喝し無理やり相手に「謝罪文」を書かせてみても学問上の真理を自己に有利に書き換えることは不可能/東大文学部卒業。同志社ロー修了/行政書士試験合格/連絡先ivishfk31@gmail.com

千田有紀氏・博士論文「『家』のメタ社会学」を読む(9)「戦前の社会学の家族論では『家』が武士的・儒教的家族制度として意識されることはなかった」?160頁

千田有紀氏は博士論文(注1)において次のように書いています:

 

戦前の社会学の家族論では『家』が武士的・儒教的家族制度として意識されることはなかった(160頁)

 

上記記述と同一の記述は千田岩波論文にも存在しており、同記述の問題点についてはすでに当ブログ過去記事において指摘しましたので過去記事(注2)を参照して下さい。

 

戦前の戸田貞三はたしかに、著書の中で「家」という概念を多用はしませんでした。しかしだからといって千田氏の言うように戸田が「家」を「戸籍上の家」だけに限定して考えていたとまでは断定できないと私は考えています。なぜなら戸田は『家族の研究』(1926年、弘文堂書房)の第7章「家系尊重の傾向に就いて」において「古い家、即ち世代を重ねて存続して居る家族団体」(249頁)と記述していることから考えて、戸田は「家」(米村昭二氏の記述で言えば「事実上の家」)を「家族団体」という文言に置き換えて記述していたとも考えられるからです。以上の点についても当ブログ過去記事(注3)に書きましたのでそちらを参照して下さい。

 

【注】

(注1)「家」のメタ社会学 : 家族社会学における「日本近代」の構築。

千田氏には全く同一タイトルでありながら、「博士論文」と、「博士論文ではない論文」という、2つの異なる論文があります。博士論文ではない論文は岩波『思想』No.898号に所収されています。当ブログでは上記2つの論文を区別するため、千田氏の博士論文を「千田博士論文」、岩波『思想』No.898号所収の、博士論文ではない論文を「千田岩波論文」と呼ぶことにしています。

つまり

千田氏の博士論文                →「千田博士論文」

岩波『思想』No.898号所収の博士論文ではない論文→「千田岩波論文」

と呼びます。

 

(注2)千田有紀教授「戦前の社会学の家族論では『家』が武士的・儒教的家族制度として意識されることはなかった」⇒松浦晋二郎「戸田貞三は戦前に意識していた」 - 松浦晋二郎ブログ

(注3)

千田有紀氏・博士論文「『家』のメタ社会学」を読む(4)戸田にとって「家」とは、ただ単に戸籍に記入された形態に過ぎない?81頁 - 松浦晋二郎ブログ