松浦晋二郎ブログ

民事訴訟は私人間の権利義務を私的自治の範囲内で自由に処分する場であり学問上の真理を確定するための場ではないので民事訴訟と学問上の真理確定とは無関係である。従って自己の著書論文に多数の学問的間違いを書いている学者が、自己の著書論文の学問的間違いを指摘した相手のことを恨み、名誉毀損を理由に民事訴訟で当該相手を訴えて恫喝し無理やり相手に「謝罪文」を書かせてみても学問上の真理を自己に有利に書き換えることは不可能/東大文学部卒業。同志社ロー修了/行政書士試験合格/連絡先ivishfk31@gmail.com

千田有紀教授「戦前の社会学の家族論では『家』が武士的・儒教的家族制度として意識されることはなかった」⇒松浦晋二郎「戸田貞三は戦前に意識していた」

【この記事は私が旧ブログ「総合研究所」(現在は閉鎖しています)において2017年2月24に執筆した記事を加筆・修正したものです。現在、千田教授は私のことを「根拠のない誹謗中傷、名誉毀損」を繰り返す化け物であるかのように、人間じゃないかのように書いて、私に関する誤った人物像をツイッターで拡散し続けていますが、この記事を読まれた方が当時も現在も私が学問的根拠を多数挙げて記事を書いていることをお解りいただければ幸いです。ちなみに私が千田教授に対してこれまでに行った学問的な質問・問題提起について千田教授側からは一切、回答はありません。】

 

1 武蔵大学千田有紀教授は、「『家』のメタ社会学:家族社会学における『日本近代』の構築」の中で(注1)次のように書いています(青字部分):

 

「戦前の社会学の家族論では「家」が武士的・儒教的家族制度として意識されることはなかった」(87頁)

 

しかし家族社会学者・戸田貞三は戦前、『家族の研究』(大正15年、弘文堂書房)の中で「家」の武士的・儒教的側面を意識して次のように書いていました(注2)(旧仮名遣いは一部、新仮名遣いに改めました):

 

 

 【戸田・引用1】

◎・・・我が国にはこのように旧家を尊び、家系を尊重する風があるが、この家系の尊重とは如何なる事であるか、このように尊重せらるる家系とは如何なるものであるか。それは家族なる団体精神の連続である。家族集団に特有なる団体精神が、成員たる家族員に新陳代謝あるにもかかわらず、常に家族に固有の精神として存続する事である。すなわち家系とは家族精神の連続的存立にほかならない(同書250-251頁)。

 

◎・・・この家憲とか、家法とか言うものは、全ての家族員を拘束して居る。例えば信玄家法は信玄によって作られたものであるとして、一度それが武田家の家法となったならば、その家法は信玄個人の意志とは離れて武田一族中の他の成員と同様に成員としての信玄をも支配したであろう。このようにして家憲や家法は、個々の家族員の意志とは離れ、客観的の力として家族員を拘束する様になる。而してこのような独立した力、独立した家族員を拘束し得る力をここに家族精神というのである(251-252頁)。

 

◎我が国民はこの家族精神の永続性を尊重し、その連続を助長するために、家族員相互の関係、及び家族員と他の者との関係に、特有なる形式を定めている(同書255頁)。

 

◎妻とか、子女とか、養子等は、家族団体を永続せしむるために、それぞれ相応の働きをなす事を家族団体から要求せられている・・・(同書264頁)。

【戸田・引用1、終わり】

 

2 また千田氏は上記論文の中で戦後初期の福武直の「封建遺制」論について触れ、次のように述べています(青字部分):

 

・「家」が「封建遺制」であるというこの問題設定(=筆者注:福武の問題設定のこと)は、意外なことに家族社会学においては新しいものである(81頁)。

・戦前「家」は「封建遺制」とはみなされていなかった(81頁)

・戦後になって、社会学理論内で、「封建遺制」「前近代性」としての「家」が、ひとまとまりの概念として構築されてきた(86頁)

・「家」が「封建遺制」であるという問題設定は、きわめて戦後的である(99頁注17)。

 

 しかし、上記のように、戸田はすでに戦前に著書の中で家の封建的側面を書いていました。

 また「遺制」という日本語は岩波書店の『広辞苑』(第5版)を見ますと「昔の制度で今に遺っているもの」とあります。戸田は戦後ではなく、戦前に、戦前の、家の封建的側面を書いたから「遺制」とは書かなかったに過ぎません。

 

【注】

(注1)「家」のメタ社会学 : 家族社会学における「日本近代」の構築。『思想』No.898、1999年4月号、岩波書店、84頁以降参照。

 

千田氏には全く同一タイトルでありながら、「博士論文」と、「博士論文ではない論文」という、2つの異なる論文があります。博士論文ではない論文は岩波『思想』No.898号に所収されています。当ブログでは上記2つの論文を区別するため、千田氏の博士論文を「千田博士論文」、岩波『思想』No.898号所収の、博士論文ではない論文を「千田岩波論文」と呼ぶことにしています。この記事の本文で問題にしているのは「千田岩波論文」です。

(注2)戸田貞三著『家族の研究』(大正15年、弘文堂書房)、「七 家系尊重の傾向に就いて」http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1018689